あなたは犬派? 猫派? そんな会話を時々耳にしますね。アンティーク家具には猫脚が施されたテーブルや椅子がありますが、犬脚は見たことがありません。現代ではペットの代表ともいえる犬のモチーフがないのはなぜでしょう?
小ぶりで使いやすいフランスのアンティークテーブル

猫脚は「ネコ科の動物の脚」を表現したものですが、私が初めて猫脚を知った時、お恥ずかしいですが、全てが猫の脚だと思っていました。しばらくして真実を知った時は驚き、なぜ猫科なの? と疑問を抱きました。
調べるとこういう事でした。
時は遡り古代エジプトや中国では、動物の脚をモチーフにデザインされた椅子が既に存在しました。そのひとつ、ツタンカーメンの黄金の玉座の脚にはライオンかチーターのような彫刻が施されています。
エジプトは古代からライオンが勇気・権力・王権の象徴として扱われ、紋章をはじめ建築物や家具などの装飾にも使われています。その文化はヨーロッパにも知れ渡っていたことでしょう。
また中国では同じように神話の動物である竜が皇帝の象徴でした。「クロウ&ボール」(竜が真珠または水晶を爪で握っているモチーフ)のデザインは、縁起が良いものとして調度品に施されていました。
17世紀、東インド会社が中国と貿易を始めるとアジアの調度品がヨーロッパに輸入されました。クロウ&ボールの調度品もそのひとつで、ヨーロッパに伝わり、次第に家具のデザインにも使われるようになりました。
このような背景から、フランスで椅子の脚に動物のデザインを施すようになったのは17世紀のことでした。オランダやフランスで流行したクロウ&ボールのデザインが、イギリスでは国王の象徴であるライオンに変わりました。更にアメリカでは鷲になるなど、その国の象徴となる動物をモチーフにしたデザインに変化します。
18世紀、19世紀…と時が流れ、外国との交流が盛んになるにつれ、その国の象徴に限定せず、色んな動物の脚をモチーフにデザインした家具などが使われるようになりました。
そして日本では猫脚が好きな人が多かったせいか、アンティーク家具=猫脚というイメージが強くなったのかもしれません。
リネン生地が素敵なルイ15世スタイルのベッド

フランスで椅子の脚に動物のデザインを施すようになった17世紀は、ルイ14世がヴェルサイユ宮殿をつくった事からも分かるようにフランスの大変輝かしい時代でした。
しかしフランス独自の美術が生まれておらず、王立アカデミーをつくりイタリア美術をお手本に独自の美術をつくろうとしていました。
その努力の甲斐あって、18世紀には美術の中心はイタリアからフランスのパリに移ります。
当時の国王はルイ15世。フランス美術はルイ14世時代の反動から開放的なものを求められるようになります。そこで誕生したのが「ロココ様式(ルイ15世スタイル)」。
ロココ様式では洗練された女性的な曲線の装飾が使われました。実はルイ15世の公妾(こうしょう)ポンパドゥール夫人が芸術の愛好家でロココ様式の中心人物でした。たくさんの芸術家のパトロンになり、初めは絵画作品が成長し、後に建築や家具、ファッションなどの分野にも影響を広げました。このように女性中心で生まれたロココ様式は、日本でいう「元祖かわいい♪」スタイルと言えるかもしれませんね。
おまけのお話ですが、噂によると、ルイ15世は猫を宮廷のペットの位置に高め、パリの街で自由に生きられるようにしたほど猫が好きだったようですよ。
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