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【新築&リノベ】ウールカーペットで住まいにぬくもりと贅沢を~連載①カーペットができるまで~

カーペットの基礎知識

2023.1.12

マイホームを建てるとき、中古住宅を買ってリノベーションするとき、候補の一つに選んでいただきたいのがウールカーペットです。でも、「汚しても洗えないのは困る」「ホコリがたちそう」「長く使えない気がする」と、不安や気になることも多いのでは。実は、子育て時期にこそぴったりなアイテムで、インテリアを贅沢で心地いい空間にもしてくれます。そこで、ウールカーペットの魅力をお伝えしたく、大阪の老舗メーカー「堀田カーペット」さんに基本をレクチャーしてもらいます。1回目は「カーペットができるまで」です。


連載1回目「カーペットができるまで」


堀田カーペットとは


 



堀田カーペットは、1962年に大阪府和泉市で創業して以来、職人とともにウールのウィルトンカーペットのものづくりと向き合ってきました。1960年代には新築住宅の床面積のうち20%程度あったカーペットの暮らしが、現在はその1/100、0.2%にまで減少してしまいました。同時に、大阪泉州のウールカーペット産地でも、当時約400台動いていたウィルトン織機が現在では約20台程度まで減少。日本においてカーペット文化は途絶える寸前にあります。カーペットの正しい知識や、カーペットの気持ちが良い暮らしを伝えることで、カーペットの文化を未来へとつないでいくことを目指し、今日もものづくりと向き合うカーペットメーカー。それが堀田カーペットです。



堀田カーペットでは、「織物」のカーペットを製造しています。一般的にカーペットは「織る」と表現されることが多いですが、現在日本で生産されているカーペットのほとんど(約99%)は、「刺す」という方法で生産されています。刺す工法は「タフテッド」と呼ばれています。
堀田カーペットの本社工場では、「ウィルトンカーペット」と呼ばれる機械を用いて織物のカーペットを製造しています。織物のカーペットを作る工場は、国内でも希少になりましたが、私たちはウィルトンカーペットの良さを大切にものづくりを続けてきました。そんなカーペットがどのように作られているか、まずは堀田カーペット本社工場でのものづくりをご紹介したいと思います。


カーペットの歴史


「ウィルトン織機」という織り機でつくられたカーペットのことを「ウィルトンカーペット」と言います。ウィルトン織機とは、手織りで生産されてきたカーペットが、イギリスの産業革命で初めて機械化されたもので、ウィルトン市で開発されたカーペット織機のことを指します。日本のカーペットの生産も、大正から昭和初期の時代に、現在の住江織物が織機を輸入し、生産がはじまりました。


ウィルトン織機はタフテッドにくらべ生産効率が悪く、タフテッド機の最も生産効率のよいものと比較すると、およそ1/100程度の量しかつくることができません。また、「機械織り」ではありますが、「織工」と呼ばれる職人の技術が必要で、現在ウィルトンカーペットメーカーは、国内に数社、織機台数も20台程度しか稼働していません。しかし、ウィルトンカーペットは、耐久性にすぐれ、織物でしか表現できないテクスチャーがあり、とても楽しい織機です。


カーペットの生産は、分業制になっています。糸づくりを担当する「紡績会社」、染色を担当する「染色会社」があります。今回は紡績・染色を経て堀田カーペットに糸が入荷されたところからご紹介したいと思います。


カーペットができるまで
①ワインダーでコマづくり


糸は、「カセ」という状態で入荷されてきますが、このままの状態では織機に糸をつけることができません。まず「ワインダー」という工程で、「木管」と呼ばれる木の芯に糸を巻き上げ、「コマ」をつくっていきます。弊社のウィルトン織機は、基本的に3.64m幅で生産され、そのためには、1色あたり約1,200個のコマが必要で、ホテルのカーペットのようにたくさんの色数を使う場合には、最大1,200個×5色=約6,000個のコマが必要になります。


こちらの準備をするのに、約2週間程度かかります。


染色されたウールです。カセの状態で入ってきます。

カセから木管に糸をまきつけ、コマを作る様子です。

1色あたり1200個のコマを準備。


②コマ付け


ワインダー工程で準備された「コマ」は「クリール」と呼ばれる、糸を織機に供給する場所にセットします。新しい商品をつくるときには、1本ずつ手作業で、糸を結んでいきます。


コマをクリールに手作業でセットします。

1本でも糸が切れたら繋ぎなおします。


③製織


これらの糸をすべて使って1枚のカーペットを織ります。なかなか写真では全貌をお伝えするのが難しいですが、織機は幅約10m、長さ20mほどの大きな織機です。クリールから糸が織機のところまで引っ張られて織られていきます。クリールに設置する糸は、表面に見える糸ですが、それ以外にもカーペットの裏側となる、ジュート麻の「地糸」、ポリエステルの「シメ糸」も、一緒に織り込まれていきます。すべての糸をあわせると、10,000本ほどの糸が織り込まれていきます。


クリールから織機へつながる無数の糸。


緯糸(ぬきいと)と呼ばれるよこ糸は、「シャットル」にセットされ、バネを使って幅方向に織り込まれていきます。カーペットの踏み心地で重要となる毛足は、実は織る際に使用する「ワイヤー」で決まります。このワイヤーに糸が絡まることで縦糸が輪状に形成され、ふかふかのカーペットができあがります。


薄いカーペットをつるくためには、低いワイヤーを使用すると、パイルの低いしっかりとしたカーペットを織ることができます。ワイヤーの先端にカッターナイフがあるワイヤーを使うと、毛先がカットされた「カット商品」になり、カッターナイフがないワイヤーを使うと、毛先が輪状になった「ループ商品」となります。それらを組み合わせて使うことで「カット&ループ商品」ができます。


織工が1台の機械に必ず一人つき、常に機械や糸、カーペットの調子を目と耳で感じとりながら織りあげていきます。一日で織れる反物は10m程度です。カーペットの1反は30mなので、1反織りあがるのには約3日かかります。


よこ糸がセットされたシャットルが、生地幅方向に往復し織り上げられます。



3.64mの幅を織るため、織機は幅広で大きいのが特徴です。

一人前の織工になるには10年ほどの年月がかります。


④補修


30mで製織された反物は補修工程にすすみます。補修工程は、糸の結び目を除去したり、糸が切れてしまったところを縫ったり、製織工程でどうしても出てしまう不具合をまさしく「補修」する工程です。約10,000近い糸を同時に織り、また織機も創業以来代々使用している古いものなので、どうしても製織時にできる傷があります。それをこの工程でしっかり修復することで、皆様にお届けできる品質に仕上げていきます。
補修工程も、様々な不具合への対応が必要で、一人前になっていくには、5年ほどの年月が必要です。


1本1本丁寧に補修し美しく仕上げます。


⑤加工


補修工程が終わると、協力工場に一度出荷されます。協力工場では、カーペットの裏側にノリを塗って、糸が抜けにくくなる加工をすると同時に、ハンカチにアイロンをかけるようなイメージで、しゃきっとした反物に仕上げていきます。


カーペット1反はとても重く、補修場からクレーンで外に運び出されます。


⑥検反出荷


加工が終わると、反物は弊社の倉庫に入荷します。入荷後は最終検反され、お客様のご要望のサイズにカットされ、出荷されていきます。カーペットの反物は1反(30m)でおよそ250kgほどあります。専用の特殊なリフトを使って反物をおろし、手作業でカーペットを切っていきます。またラグに仕上げる場合は、縫製をします。






このようにして出来上がったウィルトンカーペットは、その後建築現場に運ばれ、最終的には現場で施工され、ようやく完成品としてお客様にお引渡しされていきます。糸が入荷され、出荷されていくまでにおよそ2ヶ月。ウィルトンカーペットは、織機だけではなく、実にたくさんの人の手でつくられています。
写真だけではなかなか伝わりづらい部分も多いと思います。堀田カーペットの本社工場では、随時工場見学を受け付けております。私たちのものづくりの現場を体感しに、ぜひ一度ご来社ください。


次回(2023年1月13日公開)は「素材と密度のお話」をお届けします。


————— 堀田カーペット —————
大阪府和泉市観音寺町531番地(本社工場)
TEL : 0725-43-6464
E-mail : info@hdc.co.jp
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