【防災×キャンプ】楽しみながら始める備える暮らし「ハンモック」
2022.8.9
感染症の蔓延、たび重なる自然災害は、暮らしを楽しむことを自重させる風潮も、もたらしました。そして、非常時の備えについても情報があふれているなか、はたしてそれが充分なのか、実際に役に立つのか、不安を抱えながら過ごしている方も多いのでは? そう、備えているだけでは「もしも」の時に使いこなせないのです。だからこそ今、日常から始める“楽しく備える暮らし”を! その鍵となるのは、アウトドア。日常生活と防災の意識を結びつける道具とスキルを伝え、心豊かに生き抜く術を、アウトドアと防災のプロ・寒川さん夫婦の暮らしに学びます。
ハンモックは最高の寝具であり、アウトドアにも災害時にも役立つ道具
ハンモックひとつで世界観が変わる
寒川さん夫婦が愛するキャンプギアの1つがハンモック。
端的に言えばハンモックに寝転がると気持ちいいから。けれどそれが重要なのです。
野外なら、4~5m程度の間隔に立つ丈夫な木が2本あればハンモックが吊るせます。キャンプする場所に到着したら、まずは適した木を見つけてハンモックを吊るしておけば、テント設営や道具類をセッティングする間に子どもや高齢者もゆっくり過ごせるでしょう。また、地面の湿気を避けたい寝袋や衣類、アリなどが寄ってくると困る食品なども、テントを張り終えるまでハンモックに仮り置きできます。
そして設営が済んだら、大人たちもハンモックでひと休み。野外で、木々の樹冠を見上げ、空を眺めるのは本当に心地のいい時間です。
「テント外では、普通は立っているか椅子に座っているかです。けれど宙に浮いたハンモックで横になれば、見える世界もまるで変わり、楽しさも格段に広がります。遊びで出かけるキャンプにぜひ持って行ってほしいですし、のんびりと空を眺めたり、本を読んだり眠ったりという時間をもつことは、避難した先で気持ちを落ち着かせるのにも大きく役立つと思います」と、一さん。
テントなしで、ハンモックだけでキャンプを過ごすこともできます。金属部品もないので、荷物は1㎏以上は減ります。ハンモックに取り付ける雨除けカバーや虫除けネットなども販売されています。食べ物や道具は木に吊るし、寒さには寝袋やマットなどを併用すれば対応できます。それだけのスキルが身についていれば、どこでも寝泊まりができそうです。
ただし、樹木を傷つけないなどの環境への配慮、禁止されている場所を避けるなどの他者への配慮、落ちないように吊ったり乗り降りしたりの安全の確保という3つのポイントを守ること。
「そこさえきちんと抑えていれば、ハンモックを持つことでアウトドアの楽しさはいかようにも拡張できるんです」
移動しても吊れる木がないときや、緊急的な避難時にもハンモックは役立ちます。これも多用途に使えるということです。防水性のあるクロスタイプは、広げてポールや長い木の枝に固定すれば雨除けシェルターになり、負傷した人や荷物を運ぶタンカになり、濡れた地面に敷くシートになり、身体をくるんで保温し、場合によってはそのまま地べたで眠ることもできます。
「ハンモックって天才。持っているだけで非常時に役立ち、人生も豊かになりますよ」
部屋の柱から下がっているのはネットタイプの「ムラブリハンモック」。寒川さん夫婦は寒い時期以外、夜はそれぞれのお気に入りのハンモックで眠っています。
「ネットタイプは涼しいし、自分の背中の形に添ってまんべんなく支えてくれるのでとてもラク。腰痛の人にもおすすめです。たっぷりした大きさなので普通に寝返りも打てます」と、せつこさん。
細かな編み目は、広げれば広げるほどクッション性が増し、下からスプリングのように身体を押し上げる仕組み。寝転べば包み込まれるようで気持ちよく、すぐに眠くなるそうです。起きたら、柱のフックにまとめて掛けておくだけ。場所を取らず、日中は室内が広々と使えるのも利点でしょう。
取材/秋川ゆか 撮影/飯貝拓司
8/26発売 『「サボる」防災で、生きる』 では楽しく備える暮らしのテクニックをたっぷりとご紹介しています。
アウトドアライフアドバイザー寒川一・北欧ソト料理家 寒川せつこ著
定価:1650円(本体1500円+税10%) 四六判/128ページ
寒川 一
災害時に役立つアウトドアの知識をキャンプ体験、防災訓練、書籍などを通して伝えるアウトドアライフアドバイザー。北欧のアウトドアプロダクトを多く扱う(㈱)UPIアドバイザー。アウトドアでのガイド・指導はもちろん、テレビ・ラジオ・雑誌といったメディア出演など、幅広く活躍中。東日本大震災や自身の避難経験を経て、災害時に役立つキャンプ道具の使い方・スキルを教える活動を積極的に行っている。著書『焚火の作法』『キャンプ×防災のプロが教える新時代の防災術』他。
寒川せつこ
北欧ソト料理家、UPIアドバイザー。スカンジナビアの自然と、豊かに暮らす人々との繋がりから、スカンジナビアのアウトドア文化を主に料理ワークショップを通して発信。レシピ提供したメディアは、「NHK 趣味どき!/たのしく防災!はじめてのキャンプ」、「メスティンレシピ」、「ソトレシピ」など多数。
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